モデルハウスがあるといいなぁ、と思いましたが、総合住宅展示場に出展しようと調べましたら、出展料や毎月の費用が多額であることから、これは無理だと思いました。
私たちが選んだ土地は、伊丹飛行場の滑走路からすぐの位置でした。飛行機が飛び立ち、降下する直下の土地です。このため格安で土地を入手することができました。見たい人がいたら社員がご案内し、常駐者をおかなければ、予算削減できます。ケチな話かもしれませんが、実質を大切にする関西人の発想で、このモデルハウスをつくりました。
モデルハウスに、小さな池をつくりました。そうしましたら、この春、小鳥がやってきました。小鳥は近くの樹木で啄んだ実生(種子)を庭に落としてくれます。実生の中には、大きな樹木に育つものもあれば、殻を破って芽を出さないものもあり、実際にはその方が多く、芽を出したものも、大きく育つにはいろいろな条件、太陽と大気、雨と風、土そのもののチカラ、他の生きものとの関係などが出そろわなければなりません。
そう考えると、このモデルハウスも一つの実生かも知れません。
我々のモデルハウスが、これから家を建てる人の役に立てるのか、選んだ一つ一つの建築材料と、練り上げた設計の考えと工夫が生かされるのか。絶えざる試練を重ねながら育ち行くことでしょう。
私たちの仕事の成否は、どんな建築主とめぐり逢い、どんな住まいを実現できるかによって決まります。
どの家も、無垢の木の家が欲しいと思う方からの声掛けを機会にして、私たちの仕事は始まります。
株式会社いなほ工務店 代表取締役 本 峰久